【 第10話 】 【 暴走列車?  】

決して妥協を許さない男。それが、ジェイアール・きくち。社内で、あいつの運転は危ねぇ。と言われていた噂の男。JR=JapanRailwayの略称。 旧国鉄であって、ジュニアの意ではない。 歳は50代半ば。JRからの出向社員であった。

その日、とうとう彼の運転するダブルキャブ のトラック(車種は違うけど、こんなやつ)の後部座席に座ることとなった。 季節は、道路の端や田圃に残雪の残る頃。助手席は、ヤマさんである。

このトラック、車体のあちこちはボコボコ。 2回ほど、ひっくり返って、なおかつ現役という強者である。後部座席のウィンドウは、上から2cmほど開き放しで、どんなに力を入れても閉まりやしない。

そのうえ、後部座席のヒーターが壊れているため、冷たい外気がドンドン入ってくる。防寒着に身を包んでいても、風が吹きつけ、車の中は、ほとんど吹雪状態。出発して、すぐに、「こいつ、普通じゃねぇ。」というのが、すぐに分かった。

いくら雪がないとはいえ、冬の道である。日陰などでは、凍っている可能性は充分考えられる。

そんな道路を遠慮会釈なく、ぶっ飛ばす。一般道の冬道を、80k、100kなんぞ、楽勝、楽勝てなもんだ。「おまえは、暴走族か?」

それだけではない。 追い越し禁止区域だろうが、なんだろうが、追い越せるスペースがあると思えば、100%追い越しをかける。

追い越しをかけようとスピードアップしたときに、対向車線に車が見えると ジェイアール・きくちの後ろ姿からは、イライラしているのが、手に取るように分かった。 舌打ちをする音まで聞こえる。

追い越しをかける、チャンスをうかがい、車間距離1mぐらいで前方車に、ピタリと張り付いて走って行く。 カーレースのスリップストリームじゃねぇんだから! これって、アオリだろ!

アオリ運転は、犯罪だぜ!

国道を走っているのだから、当然、その前にも車はあるわけで 、キリがないはずなのだが・・・それを懲りもせず、目的地に着くまで、何回でも繰り返す。

「どけどけ、どけどけ」って、お前は、いつもここからかよ。

「なんぴとたりともオラの前は走らせねェ!」って、お前は、六田登のF(エフ)の主人公、赤木軍馬か。

若けりゃ、しょうがねぇな。ってこともあるが、これが50なかばのオッサン。 真冬に顔から、汗をしたたらせて運転しているという噂は、本当だった。確かに、これだけ無茶をやりゃ、汗だって出てくるわ。

でも、なんで、そこまでしなけりゃならんのだ?前方車に1mまで近より、獲物を狙う肉食動物。 顔つきも牙を剥いた狸に見えないこともない。(狸って雑食だったよな)

前に車があると、必ず追い越しをかけるのか、と本人に確かめたことがある。

「前に、車が走っているのが、許せねぇ。」
それが、彼の答えであった。 おいおい、やっぱり、気分は赤城軍馬だよ。

ジェイアール・きくち

国鉄時代は、蒸気機関車・電車の運転手であった。(本人談。)
電車じゃ、追い越し出来ないもんな。って、問題かぁ〜!

その後、彼は地方議会の代議員へと華麗なる変身を遂げた。暴走は、今も続いているのだろうか?


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