【 第9話 】 【 ペースメーカー  】

いきなり電車内に携帯の着信音が鳴り響く。「あー、もしもし」大声で話し始めたのは、近くのシートに座っているオバハン。

あのなー、電車の中での携帯電話はマナー違反だろ。近くに座っている女子高校生がメールを打っているてぇのに、大声で会話かよ。 アンタにだって同じぐらいの子供がいるだろ。親として恥ずかしくないのか。

えっ、独身!イヤイヤこれは失礼しました。

って、アンタのしてる行為そのものが、本当は失礼なんだぞ。 とは思っても、口には出しません。後が怖いもの・・・・。

病院内で携帯電話が禁止されている1番の理由が、 ペースメーカーであることは、よく知られている。

ちなみにペースメーカーとは、 心臓の補助装置とでもいうものでしょうか。

しかし、携帯電話が医療機器に及ぼす影響って、ホントかいな? まず、携帯電話くらいの微弱電波で狂う機械だとしたら、作ってるメーカーに問題がある。それに、これだけ騒がれてるんだから当然、それなりの対策は講じてあると考えるのが普通。

でも、病院内では携帯電話の電源は切りますよ。マナーとして当然ね。

この前、電気炊飯器を見にいったときのこと、炊飯器の釜の中の注意書きに
「ペースメーカーに影響を及ぼす恐れがあります。医師に相談・・・・・」と書かれてあるのには、ビックリ。ペースメーカー付けてると、飯も炊けないのかぁ?。

タケが突然、現場で倒れ、検査の結果。ペースメーカーが必要ということになった。

そのときのシャチョー
「なーに、1日2日寝てれば直るのに、。ペースメーカーとはオーバーな」
と、相変わらずの、人でなしの発言。

仲間うちでは、タケの心臓を悪くしたのはシャチョーの人使いの荒さ、ともっぱらの噂。倒れる前の2、3ヶ月は、寝る暇もないほどにこき使っていたからねぇ。

倒れる、1週間ほど前に会ったときには、やつれはてて、まるで病人そのものだった。まあ、とにもかくにもペースメーカーを装着することで入院。

そして、退院。
「ペースメーカー入れる必要なんかなかったろう。見立てした医者がヤブなんだよ」とは、 シャチョーがタケを見るたびに発するお言葉。

彼にしてみたら、 障害を持ったタケを、公共事業の現場で使うことが出来ないことが、一番の困りごとだというのが丸見え。タケは資格を、いっぱい持ってるからね。あれで命を落としていたら過労死の認定が降りたことは、想像に難くない。そうなったら、イロイロと面倒が多くて大変だったんだよ。シャチョー。と言ったところで、 身勝手さと、逃げ足の速さは天下一品やからねぇ。

入院前は「タケ」とか「タケちゃん」と呼んでたものが、いつの日から「いっきゅう」とか 「いっきゅうさん」と呼び名が変わった。

なんでだろう?と思ってたら、Nabeが言うには、
「ペースメーカーを入れると一級障害者となるだろ。 それで"いっきゅう"なんだと 。ひでぇ話だよな」と眉をひそめて教えてくれた。

こんなニックネームを付け喜んでいるというのは、 まさにガキの発想。それでも、「いっきゅう」という呼び名が定着するとシャチョーは、思ってた節がある。しかし、誰もそんな呼び名を、口にすることはなかった。それでなのか、 また、元の「タケ」に戻ってたけど。

もともと、タケは携帯電話を持っていなかった。連絡は自宅への電話のみ。 理由は持っていると、 今以上にシャチョーに呼び出されるからというもの。

まあ、それは至極当然か。とは、いっても、家に帰ることなんか、ほとんどなかったから、自宅に電話しても連絡は、つかなかったけど。

退院して、しばらくしてタケが携帯電話を使っているのを見た。

「どうしたんだ。それ。シャチョーに持たされたのか」と聞くと
「いや、自分のやつ。ただし、シャチョーには内緒なっ。」
「それは、いいけど。大丈夫なのか?ペースメーカー入ってるんだろう。」

「ああ、30センチ離せばいいって、医者が言うから」って、

おおーい、アンタが携帯電話を入れたのは、の胸ポケットだってば。



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