【 第8話 】 【 女湯でドッキリ  】

「なっ、すごい湯気だろ」

確かに、ナベの言うように、もうもうと立ち込める蒸気は、 湯船に入っている人間がシルエットにしか見えない。いま、風呂に入ってるのは大人か、子供かと聞かれても、「?」とクビを傾げるしかない。それほどの湯気が充満している。

2日ほど前。

「あははははは・・・・・、参っちゃったよ。」

と、ナベが大きな笑い声を上げて、階段をあがってきた。時間は、夜の10時を回っている。福島県会津地方に出張に、出かけたときのことである。

福島県地図 (Fland−Ale 日本世界地図)

冬真っ盛り。毎日毎日、雪が降り続き、そうでなくても出不精のぼくとしては、とてもじゃないが、宿に戻ってから、もう一度出かけましょう、なんて気にはならない。ところが、ナベとイシは、晩飯を終わってから、パチンコに出かけていた。それも、ほとんど毎日といっていい。

よくも、まあ金も体力も続くもんだと感心していた。

ナベの趣味は、パチンコと温泉である。 その日、パチンコをした帰りにある町の公衆温泉浴場に立ち寄った。(ナベの名誉のため、あえて名前を伏せる。)

ナベとイシの2人は前回来ときと同様、左側の風呂場に何のためらいのもなく向かった。ナベは服を脱ぐと、まずは体を流すために入り口から真正面のシャワーへ向かう。湯船の方を見ると2人ほど入っていた。先客の2人並んでいる、隣のイスに座り、勢いよくシャワーを浴び始めた。そのとき、

「あのー、」と遠慮がちに隣から声が掛かった。

「ヘッ」
・・・・・声が・・・・
顔をあげ、隣を見ると、赤ん坊を抱えた女性が座っている。

「なぜ?」

頭の中が真っ白。
「ここ、女風呂ですよ。」と、
赤ん坊のばあちゃんとおぼしき人の、一言が追い打ちをかけた。

「なんてぇ、こった」

ナベは、謝罪することも忘れ風呂場から飛び出した。シャワーで濡れた体を拭きもせず、脱衣所に戻る。 あとは、自分の脱衣籠を持つと、す素っ裸で、女湯から男湯まで全力疾走。

「ナベさんが風呂場に行ったあと、そばの脱衣籠の中にブラジャーが見えたんで、変だなと思ったんだよなぁ・・」 とイシ。のんびりしたもんだ。

「だったら、そのとき言えば良いだろう」

「だって、言おうと思ったときには、風呂場の中へ・・・」
確かに、イシの言うとおりナベは服を脱ぐのが早い。イシに責任はない。・・・・かな?

「それで、見ましたぁ?」とイシのひとこと。

「そんな余裕あるわけないだろ!女湯に覗きに行ったわけじゃなし!」

そんなわけで、実地検証とあいなったという次第。

玄関に入っての第一印象が、「広い」ということ。入り口を入ってすぐの、両側に、男湯、女湯があり、カウンターへと続く廊下になっている。その幅は、3.6m(2間)はある。 カウンターからは、どちらの風呂の入り口も見えるようになっている。

「前に来た時は、こっち側が男湯だったんだよな」と、今日は、紺色の”男”と書かれたノレンのある方を見て、ナベはぼやく。

お客様に対するサービスの一環として、男湯、女湯の入れ替えは珍しいことではない。

気持ちはわかるが、男湯には紺色。 女湯にはエンジ色の大きなノレンが掛かっているんだから・・・・・、

やっぱりアンタのミスだよ。ナベ。


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