【 第31話 我らかく戦えり  選挙準備編 】

横手市議会選挙。定員34人に対し、立候補者73人。

10月1日、8市町村合併によって、横手市の面積(693.59km2)は、東京23区の面積合計(621.22km2)を上回り、全国的にも注目の選挙区だ。とニュースでやっていたと、告示日前日の夕方、突然、なんの前触れもなく、東京から来た叔父が言っていた。

この叔父、なかなかに面白い人物。

人相は悪いわ、酒癖は悪いわ、口は悪いわで、親戚中の鼻つまみ。今回も、飲んでから実家に電話して、従兄弟に「殺してやる」とまで言われたらしい。

原因は、おそらく叔父の口の悪さであろう。そのくせ、涙もろく、おそろしく善人で家族、兄弟思いの寂しがり屋。

今回、うちへ来るのに、電話1本よこさなかったのは、へたに連絡して接待されるのを嫌ったこともあるのだろう。とワタシャ好意的に解釈してます。

たぶん。自信はないが。

うちへ来るんでも、タクシーの運転手にぼられたと大騒ぎ。よくよく話を聞くと、酒を飲んで、気が大きくなり、住所も電話番号も分からずにタクシーに乗り、あっちへ行けの、こっちへ行けのと、やってたらしい。そりゃ、タクシー代も高くなるわ。

人様に好かれたいなら、少しは自分の態度を改めればいいものをとは思うのだが、そんな様子はまったく見えない。 少しはかわいいジジイを目指したらと言ったら、死ぬ三日前になったら変えるよ。と、うそぶいていた。

三日後に死ぬと思って改めたろよ。といったら、死ぬ三日前になったら変えるよ。
と同じことをのたまう。ったく可愛げがないんだから。でも、ぼくは好 きなんですけどね。

話を選挙の話に戻して。

73−34=39、半数以上は落選です。
しかし、候補者全員が、自分だけは当選するものとして立候補するわけです。

ひえ〜! 凄いわ。ホント。いったいどこから来るんだ、この根拠なき自信は。
とは思ったものの、うちの候補者も、そのうちの一人なわけで人様のことは言えた義理じゃない。

今回の選挙の目標得票数は、1200票。
しかし、ひとくちに1200票とはいっても、このハードルは、とてつもなく高い。

この目標ラインを超えているのは前回の横手市議選でも、わずか2人しかいない。うち1人は公明党、今回の選挙でも鉄板。なにせ公明党からは、ひとりしか立候補してません。

そのうえ合併により票の上積みは確実。組織票を持つところは強い。 前評判から言ってこの上位当選者の2人は、今回も、選挙前から当選確実といわれていた。

今回の立候補者のなかで、前回当選得票数の最下位は211票。
この人が当選するには、単純に計算しても、前回の5倍以上の票が必要となる。ちなみに3倍以上の得票数を目指す400票以下が21人。それに加えて新人が7人 と、まさに大激戦。

まあ、前回得票数順位は、単なる数字遊びなんですけどね。 「前回選挙得票数順、候補者一覧」なんてものを作ったんで、もったいなくって。ようは、ネタの使いまわしです。 はい。

しかし、立候補者にしてみたら、「お遊び」なんてことはいってられない。 そんな、先の見えない戦いに挑む。 これぞ男の(女の)ロマン?  冒険ということにしておこうか。

そんな冒険?に挑むスタッフの一人として、事務所詰めを仰せつかってしまった。

周りからは、事務局長などと、おだてられて、いい気になっていましたけど、 主たる仕事は事務所の戸締りをする。ようは鍵係り兼、使い走りです。

選挙準備、関係書類は選挙責任者が作るんで、そっちはノータッチでいいのだが、選挙管理委員会に立候補用の書類の提出とか、その他諸々選挙準備は、なかなかに忙しい。

驚かされたのは、町村議会ではなかった供託金を積むというもの。
まず、これを収めなければならない。

へぇー、さすがに市議会議員となると違うもんだ。みんな関心することしきり。
q4 選挙に立候補するときに供託金を準備させることの是非は?

一定の得票数以下だと供託金は没収される。いや市に帰属するということか。
今回の選挙では、200票以下ということだった。

ということで供託金を納める用紙を持って、いざ法務局へ。

数人が、書類らしきものを持って、受付の前の2列になったベンチシートに座っている。そのうちの2、3人は、供託金を納める手続きに来ているのだろう、持っている書類入れから、そう察せられた。

供託金の書類を見せると、受付の女の子から、何箇所か書類の不備を指摘され直すことに、
それが終わると、
「にじていせい、と、ここに書いてください。」
「にじていせい?」
「はい、2文字訂正です。」
「ああ、その2字ね。」

さすがに法務局、1文字とて許してくれない。きたない字で、2字訂正と書く。
女の子が目の前で見てるとなると、そうでなくても下手な文字が、より汚くなってしまった。
(女の子がお前なんか見てないって、自意識過剰です。はい)

そんなこんなで、なんとか書類は整い、15分ほど待った後、
「これを持って、北都銀行大町支店で払い込んで下さい。」といわれた。
北都銀行が横手市の指定銀行らしい。

銀行に行き書類と供託金30万円を出すと、あっけないほど簡単に手続きは終わった。

しかし、供託金を収めると、それ以上のメリットがあることも知った。

ポスター代金、はがき2000枚分の切手代、選挙カーの借り上げ代金、ガソリン代、選挙カーの運転手の手当て等、上限で100万円近い金が行政から補助?、支給?される。

選挙管理委員会に最初に行ったとき、若い担当職員が、選挙カーの借り上げの書類がないという。
選管からの手引き書を読んで、ハイヤー、タクシー、レンタカーは認められるが、個人からの借り上げは、当てはまらないと思って書かなかったのだが、言われるままに提出することに。

しかしこれは、担当職員の勘違いで、個人からの借り上げは認められないことが後で分かった。
なーんだ、こっちのほうが正しかったんじゃないか。と自分を誉めたい気分でしたが。

お隣、湯沢市ではジャンボタクシーを借り上げ選挙運動をした候補者がいたらしい。
それを見た有権者が、
「自腹でタクシーを使うなんて、この不景気な時代、地元のタクシー会社を助けようなんて、たいしたもんだ」と感心しきりだったそうだが、市から金が出ると知った途端、がっかりしていたという。

なかなかに立候補者に対して、行政は至れり尽せりです。これが国政レベルとなると桁が違います。
選挙:衆院選 費用769億円、予備費から政府は25日、30日公示の衆院選に必要な経費769億1570万円を予備費から支出することを決めた。 26日に閣議決定する。内訳は、衆院選と最高裁判所裁判官国民審査の経費752億889万円▽選挙啓発費用 12億1072万円▽選挙違反の取り締まり経費4億9609万円。
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国政の話はともかくとして、あと必要なものに、選挙カーの審査がある。主に車の上に乗せた看板が規定通りのものかどうか審査ですが、これは警察署において行われる。

看板を車に乗せるときに、ちょっとしたトラブルが生じた。
10月末となると日の暮れるのが早い。今までの看板には照明がなかった。

そこで照明をつける事にして、スピーカーをレンタルした電気屋に、告示日1週間前の日曜日、下見に来てもらうことにした。
ぼくは、事務所の準備のため、立ち会うことができない。

今まで、何度もやっているので安心していたのだが、電気屋から、
「スピーカーを付けると、看板の高さが規定オーバーだ。」と携帯に連絡が入った。

合併によって選挙規定も変わり、いままでのものでは通じなくなっているんだなぁ。だったら看板を切るしかない。一緒に準備していた仲間にスピーカーの高さ分だけ切り取ってもらうことにして、看板のある所に行ってもらった。

「切り終わった。」と連絡が入った直後、件の電気屋から
「他の候補者の看板を見たら、切らなくてもいいようだ。」
と電話があった。
あとの祭りとはこのこと。覆水盆に帰らず。
まさか切り抜いた部分をガムテープかなんかで貼り付けるわけにもいかない。

翌日、照明器具一式は後日ということだったので、とりあえずスピーカーを取り付けてもらった。
どうにもこうにも、みてくれが悪い。ここで、この電気屋への不信感が芽生える。

その後の連絡で、照明器具の取り付けはできても、インバーターを貸してくれる所がないという。
これがないと明かりが点かない。 湯沢市、横手市の同日選挙で候補者が140人近い。

レンタル物はすべて出払っているという。さもありなん。
だから早めに連絡してたじゃないか。とは言わなかったが。不信の芽が膨らむ。

レンタルが駄目となると、あとは買取りしかない。候補者に確認を取り、取り寄せてもらうことにした。
ところが連絡とるたびに値段が上がっていく。最初4万円ぐらいといってたのが、電気容量が小さくて役に立たないらしいという。 「どれぐらいなら」というと8万円ぐらいのものなら安心だという。

ギリギリ5万円ぐらいまでなら自分の裁量分だとは思っていたが8万円となると・・・・・
さっき4万円といったものが倍になったとは、候補者に連絡もとりづらいが、思い切って電話をする。
「それがないと駄目なら、買うしかないんじゃないか。」との返事。
電気屋への不信感だけがつのってくる。

仲間のひとりに連絡すると、
「買取りなら、もう少し安いものが審査日前日まで、なんとか手配できるかもしれない。」
というので電気屋の方は断ることにした。

その翌日、照明器具が点いたので見てくれと、候補者の家族から、午後3時ころ連絡が入った。
「ほんとに、こんなんでいいの?」というコメント付きで。

この連絡が入るチョッと前に、
仲間から「候補者の家の前を通ったんだが、あの看板おかしいぞ」
と携帯に入っていたのだが、身動きがとれなかった。
しかし、ことは緊急事態のようだ。

ええい、ままよ。行きましたよ。
看板を一目見て、唖然、呆然。

照明器具とは、長さ1m20cmほどの蛍光灯なのだが、それが看板の上部4面に取り付けられていた。看板の前部は横幅、90cmほどしかない。そのうえ、スピーカーを取り付けるため、切り抜かれている。そのスピーカーの中心部を横切るように蛍光灯が取り付けられ、両端が15cmほど飛び出している。

イヤー、いくら選挙はパフォーマンスだ。目立たねばならぬ。
とはいっても、これじゃ物笑いのタネでしょう。
「前後の蛍光灯は、はずしてくれ」というと、

強行に「4本ないと格好が悪い」と言って譲らない。
これは、後で自分たちで何とかするとして。その日は丁重に、お帰り願いました。

彼と彼の家族とて、大事な票ですから。おっ、まるで選挙戦の幹部みたい。

看板後部の灯りは付けられないようだ。という情報が入ってきた。
このことを警察署に行ったときに聞いたところ、

「どうしても後部に灯りを付けたいというのであれば、警察としては反対できないが、陸運局で許可を取ってくれ。」ということだった。

4本付けなければと、強行に主張した、あの電気屋は何を根拠に言い張ったのだろうか。

審査前日の夕方、やっと届いたインバーターを仲間たちと取り付け、前部には短い蛍光灯を付け、なんとか格好をつけることができた。

そして審査当日、関係書類を持ち、シートをはずすための脚立をもち、いざ横手署へ。

当然、看板は選挙当日まで、お披露目することはできないため、ブルーシートで囲って見えないようにして道路を走行しなければならない。

警察署に向かうとき、前方に何台かの選挙カーが見えた。
横手署の駐車場は、ほぼ満車状態。やっと空きスペースを見つけて駐車させる。

受付に直行すると、そこはイモを洗うが如し。ヒエーッ、満員電車状態じゃないか。
人垣をかき分け、選挙責任者の書いた書類を提出するも、担当者が
「書類をコピーしたから、分類してくれ」という。

なんのことか分からず説明を求めると、書類は正副2枚つくり、1枚は警察署で保管し、もう1枚は候補者が持つのだという。オーイ、責任者、あんたの書いたもの1部しかなかったぞ。

順番を待つ間、ほかの候補者の選挙カーを見ると、スピーカーが4本付いてるものや、前後の看板を大きく、くり抜きスピーカーを付けたものや、うちのに比べたら一回りも大きな看板を付けているものなど、なかなかに興味深かった。
名前の書かれた部分のシートは、はずす必要はないという、脚立は不要だったようだ。

各候補者の車を、担当の警察官がメジャーで規格にあっているのかを計測していく。
後部に取り付けられたライトを、はずさせられている車もある。
うちの情報網も確かなもんだ。

いよいよ、自分たちの番になった。
「ライトは、付いているか。」と聞くので
「付いてます。」と答えると
「見せてくれ。」という。

そのとき、一緒にいった人がやってくれました。
ブルーシートを全部はずし、看板のフルオープン。

候補者の名前のお披露目を行ったのです。
どうも確信犯くさいなぁ。アハハ、うちだけですわ、うちだけ。

そんなことにはかまわず、その担当者、
「なんだ、ライト付いてないじゃないか。」と言うんです。
「いやぁ、照明は付いてます。」と言ったら、
「そうじゃなくて、後ろの照明だよ。」だと。

『後ろって、言わなかったじゃないか・・・ブツ・・ブツ・・』
これは、口には出さず。

「じゃぁ、これでいいですね。」と聞いたら、
「だめだ。」という。
「なぜです?」

「手間掛け過ぎだ。」だと。
手間かけさせたのは、そっちでしょう。
こん時ですわ、後部の照明についての説明を聞いたのは。

このとき重量オーバーで審査に通らなかった候補者の車があった。
それが、なんと共産党候補者の車。

これには驚いたね。
共産党といったら選挙のプロ?という認識だったからね。
なんでやねん?

それは、ともかく、これにより選挙準備は整った。いざ決戦へ