【第22話】 【 雪道でスリップ 】

めっきり日差しも強くなり、ようよう春めいてまいりましたが、いったいなんなんだ、この雪は。 もう3月だぜ。「やまぬ雨はない」とはいうが・・・

2、3日いい天気が続いて、このまま溶けていくのかなぁと思えば、ドカッと雪が降る。それの繰り返し。 例年であれば、今の時期に、道路に白く雪が残るなんてことはなかったのに、除雪車がよせていった雪の塊が、 道路わきにゴロゴロしている。

ということで、「雪道の走り方」を伝授。 (って、何の関係があるんだ・・

実は、この話、今年の秋ぐらいの、雪が降る前にやろうかと、準備していたんですが、前倒しして。 (って、ほんとかよ。

ぼくの冬用の車は、2シーター、ミッドシップエンジン搭載、4WD車、 オープンスペース付きなのだが・・

(だ・か・ら・軽トラックをそんな風に言わないってば・・

正直、4WD以外の車に乗ろうとは思わないね。冬道を走るとなると、これが一番安心。

よく、「雪道の運転のしかた」みたいなことを、 テレビなどでやったりするけど、「雪道の歩き方」と 同じで、そんなもんはない。

そういえば、全国的に大雪が降り、追突事故が多発したときに、「トンネルの前後は気をつける」とか 「スピードを出さない」とか、どうでもいいようなことを放送してたけど、そんなもん、普通タイヤを履いていて、 運転テクニックで、どうたらこうたら出来るって、もんじゃないんだぜ。

雪の降らない所の人は「雪降る土地の基礎知識」のガイジンさん のごとく、すぐに「チェーン」というけど、使用限定用品と心得るべし、でしょう。

除雪が思うように任せなかった時ならともかく、今のように綺麗に除雪している道路を「チェーン」で走ったら、 1kmとも行かないうちに、ぶった切れてしまう。タイヤハウスの中を、切れたチェーンが、バチバチ音を立てて 叩きつけ、傷つけてしまうのがオチ。

今は、いろんなタイプの「チェーン」が出てるのは知ってますよ。ゴム製のやつとかね。 一冬それで間に合うようなことをいうけど、あくまでも、緊急避難的なもんだね。 それに、いい値段すんだよ。

2本セットで、ぼくの、2シーター、ミッドシップエンジン、4WD、オープンスペース付きの車の (だから、軽トラを、そうは呼ばないってば・・) スタッドレスタイヤだったら、安いものなら4本セットで買えるぐらい、いやそれ以上の物もある。

だったら、スタッドレスタイヤですよ。タイヤの減り具合にもよるけど、3シーズンぐらいは履けるしね。 それに、雪が降る前に、交換したら、春に雪が溶けるまで、そのままでもいい。履きつぶす気なら、 オールシーズンでもいいわけだし。

ただし、スタッドレスタイヤ、いくらパターンが綺麗に残っていても、ゴムが固くなったら寿命です。 固くなると、雪への食いつきが悪くなり、スリップしやすくなる。

以前は雪道用といえば、スパイクタイヤだった。凍った道には、抜群の製動力だったんだけど。 雪のない道を走ると道路が削れ、粉塵公害が起こったために使用不可となっている。

とはいっても全面禁止措置というわけではない。一部の山間部の町や村での使用は認められているが、 その町なり村なりを出たら履き替えるという条件がつく。予備のタイヤを4本積んでいて、境界線でタイヤ交換を するなんて、そんなマメな人がいる思う?
実質スパイクタイヤ禁止と同じことなんですよ。

雪道用としてFF車(前輪駆動車)が出た当時、知り合いの車を運転したことがある。 パワーステアリングなどという上等なものは付いてなかったから、これがハンドルが滅茶苦茶重いんだ。

切りかえし、なんかしようものなら、汗だくになった他に筋肉痛になるほど、力がいるものだった。
こんな、運転の難儀な車なんて、とんでもない。と思ったものだった。

FF車、前輪駆動というぐらいだから、チェーンをつけるとなると、当然前の車ということになりますよね。 その頃の話し、「ガチャ、ガチャ」とチェーンが切れて、タイヤハウスを叩く音を響かせて走ってきた 赤いHONDAの軽乗用車が、脇を走り抜けた。

うるさくてしょうがないだろうに、チェーンなんか、はずしてしまえばいいものをと、下を見てみたら、 後輪にチェーンを、はめていた。 運転手は若い女性でした。あれは、自分でやったものだったろうか?

それでも一度FF車で、雪道を走るとFR車(一般的な車)には、戻れないね。

FR車でスリップすると、もうダメです。ハンドルなんか何の役にも立ちません。
以前、橋の上で、前を走る車が、突然スピンしたのを目撃したことがある。

道路幅は6mぐらいか。両側は橋の上ということもあり、雪は、ほとんどない。スピンを始めた車は、 クルクルと回りながら進んでいく。そのまま、十数メートル。橋を渡りきったところで、雪の壁に激突して、 やっと止まった。

スピードが出てなかったので、雪へ鼻っ面を突っ込んだだけだから、車の損傷はたいしたことはなかった。とは 思うけどね。

でも、対向車が来ていたら・・・・ どちらの車も避けようがなく大事故になっていただろうね。

あのときの前の車が、急ブレーキをかけたと、か急ハンドルを切ったというのではない。一直線の橋の上。対向車 なし。の条件で、する必要もない。

おそらく、ほんのちょっとハンドルを切っただけなのだと思う。橋の上は寒風が、吹きすさぶため凍結状態に なりやすい。その上でタイヤがスリップし始めると、あとはコントロールは効かず、車まかせにするしかない。

このときに、アクセル、ブレーキを踏まない。ハンドルも切らない。慌てないで対処。なんていうけど。 パニクってる状態で、そこまで出来るの人は、そうはいないと思うけど。

滑ったら最後、あとは運を天に任せるしかない。といったところか。

それじゃ、FF車、4WD車なら、そんなことがないのか?ということになると。FR車よりは、滑る 危険性が少ない。というだけに過ぎない。

滑るときには滑るんです。制動距離は短いとは思うけど。それでも滑るときには滑る。

坂の頂上からの資材の運搬作業をしていたときのこと。 緩やかな坂が100メートルほど続く道路。除雪した後が、まるで磨き上げたように。ぴっかぴか。

車はフルタイム4WDの2tユニック車。坂を登っていくときも滑って怖かったけど。 荷物を積んだ帰り道。 運転手はぼく、一緒に行った「フル」が助手席に乗った。

ギアはロウ。エンジンブレーキを使いながら降りることになる。のだが・・・

スピードは時速4,5キロ。ジワーッと車が横を向き始めた。スリップしているのだ。

助手席のフルが叫ぶ。
「ブレーキを踏むな!アクセル踏むな!」
「何もしてない!」
こっちは、そう叫び返した。

それでも、
「ブレーキも、アクセルも踏むな!」と助手席で絶叫している。
「なんにも、してない!!それでも滑ってるんだ!」

ぼくの言葉を聞いて、奴も理解できたのだろう。タイヤが4輪全部が回転しながら滑っていることに。
それから、奴の行動は早かったね。

スピードは、たいして出ているわけではない。
助手席のドアを開けると、飛び降りやがった。ぼくを残したまま、てめえ1人だけ。

まさか、運転手が車から飛び降りるわけにもいかない。
ハンドルは、車が横を向かないように、出来るだけ固定することにした。ハンドルを、あっちゃこっちゃ 切ってしまうと、途中、ちょっとでもブレーキになるような所があると車が横転してしまうおそれもある。

あとは目の前に迫る、坂の途中のカーブの雪の壁に、 車を突っ込ませて車を止めるしかない。それでも、そこまでは2、30メートルはある。

進行方向に対して、少し斜めになった状態で車が進んでいく。車の自重と荷台の荷物の重さで、スピードが、 徐々に増しているのが分かった。

正直、車を放り出して、飛び降りようかとも考えたが、車が斜めになって進んでいるので、 飛び降りた後、荷台部分のタイヤに轢かれてしまうこともありえる。

それに、道路の両側は2メートル以上の壁になっている。かえって車の中にいる方が安全だと考え直した。

全身、冷や汗でびっしょり。
車はそのまま、右へ右へと流れ、道路わきの側溝に後輪が落ち、傾いたまま、なんとか停止することができた。

「ふーっ」と大きなため息をつき、ドアが開けっ放しの助手席側から、道路へと降りた。

坂の上のほうでは、さっき飛び降りたフルが
「いやー!!すげぇなぁ。道が、テンカテカや」
なんて叫んでる。そのとき、足元が滑って尻餅をついた。

ナイロン製の防寒ズボンを履いていたため、尻をついたまま5、6メートルも滑りおりてきた。
「あははは・・・、まるで鏡の上だな。これじゃぁ、車が滑るのも無理ないか・・」
って、なに喜んでんだよ。

「勘弁してくれよ・・。なんで自分だけ、飛び降りるんだよ・・。」
「だって、危ねぇじゃん。オレは、けがをしたくないんだよ。」 だと。ったく、もう。

ことほど左様に、4WDだろうとスタッドレスタイヤだろうと、滑るときには滑る。

そして、こういう時の対策として使うのが、「チェーン」なんです。つまり、最初にいった使用限定用品という 意味ですわ。

このときは、チェーンを持っていなかったため、こんな恐怖体験を3度もすることになっちまった。 フルに、運転変われと言ったら、「おれは、怖くてダメだわ」だと。
フルの顔の方が、よっぽど怖いわ。
それでも、坂を下るたんびに、 車から飛び降りやがる。

刑事ドラマのようなことがやりたかっただけなんだろう。人を運転手にしてさ。