【第17話】 【 雪降る土地の基礎知識 】

つい最近、テレビで福島県会津坂下(あいづばんげ)町に、若いアナウンサーが「こんにちは」と70代のばあちゃん女性に挨拶するところから、始まる取材の番組を見た。

その、ばあちゃん女性、紅を差し、化粧をしているのが分かったが、それを「ヤラセ」とは言いますまい。年がいっているとはいえ、女ですから。

全国放送だもの、化粧ぐらいはねぇ。

その後、雪寄せしている70代、80代、90代の女性たちのところに行ったら、「やってみい」と言われ、その若いアンちゃん、スコップを持ち、雪に突き刺し、「固いですね」などと、のたもうていた。

そりゃぁ無理だって。1mの高さになっている雪の下に、スコップを刺して雪をどかそうたって、巨漢の格闘家だって、スコップが折れることはあっても、1ミリたりとて、雪を動かすことなんて出来っこないってば。

ことほどさように、雪が降り積もるということに、都会の人間はうとい。
特にテレビ関係者。

たとえば、
「首都圏、大雪のため交通が完全に麻痺」

などと、ニュースが流れると、決まって、
「雪道の歩き方」などと特集を組んだりしていた。
(いまはどうか知らんが・・)

んな、バカな。

なにかい、雪国の人間は、夏と冬とで、歩き方が違うとでも言うのかい? そんなもん、あるわけないっしょ。
もし、違う歩き方があるとしたら、こっちが教えてもらいたいもんだ。

ようは、靴が違うんだよ。

フェラガモか、カルガモか知らんが、こじゃれた、その靴底を見てみい。果たして、そんな靴底で雪の上を歩けるかどうかなんて一目瞭然。説明不要。

話は変わるが、初めて、フェラガモという名前を聞いたときには、たまげた。

フェラガモを県南部に来て、途中で区切って言ってはならない。
前をカタカナ、後をひらがな、などとは間違っても標記してはならない。

これ鉄則、これを破ると軽蔑されるか、ぶん殴られても文句は言えません.。

なぜか?

そんなこと書けるわけ、ないじゃないですか。

詳細はメールにて・・・
なんてことは、ありませんから。ざんね〜ん。

それはさておき、雪道では、雪用の靴を履く。それ以外にはない。
それでも、滑るときは滑る。そんなもんです。

一般的なのが、防寒長靴、というやつ。これが一番安全安心。
長靴を選ぶときのポイントであるが、出来るだけ長く、そして普段履いている靴のサイズより1cmは大きめなものを買うこと。

理由は、足に靴が密着した状態だと冷たくて、長時間、外にいるとなると、つらいものがある。つまり、空気の層をつくり保温に務めるということ。

でかいとガボガボして歩きにくいと思うだろうが、そんなもん、靴の下敷きでいくらでも調整できる。これは、長靴に限ったことではないので、冬には有効な手段ですので、お試しあれ。

ただ、靴ぐらいであれば自分が冷たい思いをするぐらいで済む話だが、車となると話は別。

つい最近も、朝6時半前に家の前で、モサモサと雪の降る中を、雪かきをしていると、傘をさした人が近づいてくる。6時半前とはいえ、まだまだ薄暗い。

だいたい、雪が降っているときに傘をさしている人間なんて、地元じゃ珍しい。
片手を、わざわざふさぐ必要はないわけですから、フード付きのコートなりを羽織るというのが一般的です。

まあ、こっちとして、いなかもんの習い性として、朝行き会えば「おはようございます」ぐらいは言うのは、当たり前の行為。

軽く頭を下げたのは、ガイジンさん。それも、背が高い。190センチはあろうかという大男である。顔つきから想像するに、イタリア系とかギリシア系の、地中海系の若い男であった。

これが、憎たらしいことに役者のような、いい男。仕立てのいいスーツをビシッと着込んでいる。

そんな彼が、「オートバックス、ありますか?」と聞く。
「いくらなんでも、こんな早い時間には開いてないだろ。」
「開くまで、待つつもりです。」という。

話を聞いてみると、東京から秋田市に行く途中、雪のため、秋田道を途中下車したという。自分で会社をやってて、社長だ。と聞かれもしないことまで、しゃべってくれた。

「この辺の人は、随分とスピードを出すんですね」という。
そりゃそうだ。タイヤが違うのだ。

「よく、普通タイヤで来たもんだ」と感心すると、
「新しい車ですから」という。

オイオイ、車なんか、どんなに新しくても雪の上じゃ、何の役にもたちやしないんだぜ。それが証拠に、ぼくの冬用の車(2台あるの2台、単なる自慢でしかないが)は、2シーター、ミッドシップエンジン搭載、4WD車。

平たくいえば、軽トラックなのだが。
車の仕様が違うって、そんな細かいところを気にしていたら、雪国では暮らしていけないんだって、それに多少の見栄もあるじゃん。)

これが、雪道を走るには、一番安心して運転できる乗り物である。
言うまでもないことだが、ぼくのは新しい車じゃありません。

確かに彼の車は、新車の高級車でした。
車種?

そんなもん、聞かんといて。「車は、自分の体を運ぶ機械」ぐらいの認識しかないんだから、メーカーなの車種などと、そんなの分かるわけないっしょ。

でも雪道での安全走行というのを考えると、彼の普通タイヤの新車よりも、ぼくのスタッドレスタイヤ装着のボロい軽トラの方が、ずーっと高いです。

それと車が2台あるということの種明かしをすると、農家をやってりゃ2台なんて特別珍しいことではない。家族の人数以上の車があるというのは、極々普通のことですから。

話は戻って、彼が言うにはチェーンが欲しいという。

チェーンなんか止めておけ。どうせ、1kmも走らんうちに、ぶった切れちまって走れやしない、チェーンじゃなく、安いのでいいからスタッドレスタイヤを買った方がいい。すぐ近くに24時間営業のガソリンスタンドがあるからというと、そこへ行ったが、車に合うタイヤのサイズがなかったという。

彼の車のタイヤサイズは、確かにでかい。スタンドでは置いてなくてもしょうがないのかも。と思ったのだが。

それでも、やっぱり、チェーンが欲しいと言う。

「だいたい、外国だって冬道はスタッドレスタイヤだろ」というと
「外国では、冬も夏も同じタイヤだ」と言い張る。

なかなか、ガンコなガイジンさんだ。

これ以上、言い合いになって国際問題になっても、まずいと思って、黙って引き下がりましたけど。   (おいおい、お前いったい何様なんだよ。

代わりにといってはなんだが、近くで起きた事故の話を教えてやった。

初雪の降った日。普通タイヤのままの車が、通学中の小学生の集団の中に、縁石を乗り越え突っ込み、女の子が1人、最悪の事態は免れたものの、長期の入院を余儀なくされたことを。

そして、こんな事故を起こした運転手のことを、雪国では「ばか」ということ。

このでんでいくと、首都圏に雪が降ったときに、自動車を乗り回している連中なんぞ「ばか」の集団。
凶器のさた。
えっ、字が違う。違ってないさ、車は凶器になりえます。ましてや、雪道を普通タイヤで走ってんだから。

そのガイジンさんには、「とにかく、タイヤ交換してから行けよ。」と忠告してやった。

彼は、いったん帰りかけ、きびすを返し、名前を聞いて行ったが何のためだったんだろう?

うちになんか、泥棒に入ったって、自慢じゃないが何もないぞ。

えっ、そのガイジンさんとは、何語でしゃべったのかって、
そりゃもちろん・・・・



相手が流暢な日本語だったの。
こっちは、純粋(ピュア)な秋田弁だったけど。