【第16話】 【 はたはた 】

箱単位で買う魚、それが「はたはた」である。

秋田県以外の人には、箱単位と言われても???であろうが、
「はたはた」は今でも、1箱(目方は3kgとか4kgと店によって、あるいは日によって違うが)で、 売り買いされている。 フタ付きの発砲スチロールの箱であるが、むかしは、木箱であった。

最盛期のころの漁獲量は2万トン、今年の「季節はたはた」の割り当て漁獲量が2500トンと、八分の一となっているが、これでも、回復傾向にある数字なのだ。

その最盛期の頃には、家々ではハタハタを、数箱もしくは十数箱という単位で、買いだをめしていた。 魚を箱単位で、普通に売買されているというのは、他の地域では考えられないのでは、ないだろうか。

「はたはた」についての詳しい話は、
初冬、ハタハタ来たどぉ〜男鹿市北浦  を見ていただくとして、あいも変わらず、源流岩魚紀行の管理人さんは、凄い。写真を見れば一目瞭然を証明してます。(凄すぎて、メゲルよなぁ〜

「はたはた」は、かつては、秋田の人間意外は食べない。と言われていた。
それは、ハタハタは鱗を持たず、外見が、蛇のように見えるということから嫌われた、というのを聞いたことが ある。

しかし、それが事実かどうかは、定かではない。
確かにはたはた」には「うろこ」がない。

朝鮮半島において「はたはた」は下魚であり、猫またぎとまで言われた魚であった。

むかし、朝鮮の、ある王朝においてクーデターがあり、都を捨て、海岸線まで逃れた王様が、空腹に絶えかね、 地元の漁師に食べ物を無心したところ、

「あいにく、これしかありません」といって出したのが「はたはた」

ところが、空腹であったにも関わらず、王様は、あまりのまずさに口から出してしまった。というの伝説?があるというのを、ラジオかなにかで聞いた覚えがある。

朝鮮半島においては、まずい魚の代名詞でもあったようだ。

北朝鮮から輸入した「はたはた」の腹の中に、小石が詰められていたという事件があったことも、付しておこう。

かの国は、すぐにバレルようなことを平気でやってくる。

では、なぜ秋田で食べられたのかというと、
これは、秋田沖で産卵し、その時が最もうまい時期である。ということらしい。 というか、それ以外の時期は、マズイということなのだろう。

いまでは年中「はたはた」を食べることができる。確かに、今の時期のもの以外は、うまいとは思えんねぇ。 ですから、ぼくは、買いません。加工してしまうと、生のものとは違いすぎるんでね。

「はたはた」といったら「ぶりこ」。メスのおなかに入っている魚卵である。
魚の卵としては、大きい部類に入る。

ふぐやタラなどは、白子(しらこ)のあるオスが珍重されるが、「ぶりこはたはた」のメスの方が値段が高い。

季節はたはたの「ぶりこ」のとろりとした粘りと、プチプチとした食感は、まさに秋田の冬の味である。 オスの「白子」も、季節ハタハタの今の時期のものは、トロリとして捨てがたいものがある。

では、食べ方であるが、焼く煮るということになる。

まずは、「焼き」であるが、塩焼き。軽く塩を振り、炭火で焼く。
それに、醤油を少したらしぐらいが、ちょうどいい。

あとは、田楽。 素焼きにした「はたはた」に、味噌にクルミと少量の砂糖を加えたを合えた「クルミみそ」で食べる。

「焼く」といっても、「生はたはた」となると、そう簡単には焼けてはくれない。
なかなかに時間のかかる料理法である。

あとは煮る

味付けは、味噌か、醤油、あとは「しょっつる」。

「はたはた」は、味がタンパクであるため、小味噌煮風に、濃い目の味付けにするのが、ポイント。醤油味も同じである。

他の具材としては、ネギ、あとは、豆腐

余計なものを、ゴチャゴチャといれないことも重要。 「はたはた」は、身が柔らかく、煮崩れしやすい。

この前、知り合いの所に、いったら その家の3歳の子の、お手伝いで、鍋の中をかき回したもんだからバラバラになってしまった。

「怒るにも、怒れないし・・」とぼやいていた。

「はたはた」が最盛期の頃、何箱も買いだめしていたということは、 当然の結果として、冬の動物性タンパクは、ハタハタ、オンリーとなる。

「はたはた」は、焼きたてだとうまいのだが、冷めると生臭さを感じるのだ。

子供の頃、弁当のおかずが、焼きハタハタが2匹。というのが、1冬つづいた。
さすがに、味付けを、どう変えようとも、毎日毎日「はたはた」となると、さすがに、参ってしまった。
もう、はたはたは、沢山だと思ったりもしたものだった。

しかしハタハタは、その後の乱獲がたたり、庶民魚から、高級魚へと変身をとげる。食べたいと思っても、 手に入らない時代が到来したのだ。

ぼくの友人に、料亭の息子がいて、そこへ遊びに行ったとき、オヤジさんが、
「いくら、お客さんの要望とはいえ、とうとう、ハタハタをお膳に出すことになった。ちょっと前までは、考えられなかったのに・・・・」
と苦笑いをしていた。

なまじ安いときを知ってるだけに、料理人としてのプライドが、許せなかったのかもしれない。

その後、北海道産の「はたはた」を始めてみたときには、 その巨大さに、度肝を抜かれた。県内産の、 ゆうに倍はある。

いや、ちょっと小ぶりの「はたはた」だったら、三匹分はありそうなもの。 値段も一匹、1500円以上もした。 超高級魚である。

いくらでかいとはいっても、キンキンといい勝負、という値段だ。
はたはた一匹に1500円か・・・だったら、キンキンだろう。なんて思ったものだった。

その後、魚売り場に行っては、ハタハタを見ながら、ため息をつくような時代がつづく。 その頃は、テレビやラジオのリポーターが

「ハタハタは、我々、庶民の手の届かない、高級魚となりました。」
などと、したり顔で、のたまっていた。

アナウンサーの平均年収が、いくらか知ってますか?

1000万円超なんだそうです。

そんな、高給取りが、「我々、庶民」などと、軽々しく口にするんじゃねぇよ。
おめえの給料だったら、安いもんだろう。何万も何十万もするブランド品を、安かったの〜なんて買ってんだろうが。

なんて、毒づいていたものだった。

その後、秋田県として禁猟期間を設け、取るだけの漁業から、育てる漁業への転換を図ったことで、 いまでは、わりと簡単に、買い物カゴの中に入れるようになったね。

もちろん、箱買いもしてますよ。
子供の頃は、もう沢山と思ってたときもあったのにね。

根っからの秋田人ということなんだろうね。