【第5話】 【 毒きのこ試食記 】

1日目

いつもの年であれば、きのこ採りには早いのだが、今年は冷夏、長雨。 であれば、きのこの生えている可能性が高いと思い立ち、9時過ぎに家を出て山へ向かう。

ここいらで、 アミコ と呼ばれるきのこを、大き目の買い物袋で半分ぐらいと、 ラクヨウ が7,8本ほどか。 目方にしたら4kgほど(昔風に言えば、1貫目)。 実質、山に入っている時間は1時間チョイと言ったところだから、初めてにしては上々の量。

ただし、アミコやラクヨウの出始めのものは、大きいものが多いのだが、 傷みが早く腐っている物や、虫に食われている物も多い。

それが、寒くなるにつれ小ぶりで身も固くなり、良いものが出てくる。
それと、シメジ系統と思われるきのこがあちこちに生えていた。

これが、見るからに上手そうで、色は、傘の色が灰褐色、裏が放射線状になっている。 柄がふっくらと太っていてまっ白で中空。それがボールに半分ぐらいの量採れた。

帰りにスーパーで昼飯のカレーライスを買い、帰宅したのが1時過ぎ、 むしょうに腹が減っててカレーのほかにご飯を一膳。
どうも、時間がずれると、胃袋もバカになるようだ。

さて、問題のシメジに似たきのこ。
わたしのきのこ採りのバイブルとでもいうべき、「秋田きのこ図鑑(畠山陽一著)」 がいくら探しても見当たらない。 しようがないんでインターネットで調べたのだが、どうもよく分からない。 が、大丈夫そうな感じもする。

分からない物は、口にしないのが鉄則なのだが、
「エーイ!物は試し」と、 1度噴きこぼしてから(やっぱ、少し不安感があった)

醤油、酒、砂糖で味付けをして小皿に取り分け、 二口ほど(本数にして5,6本か・・)はっきり言ってまずい。

きのこの胞子臭いというか、カビ臭いというか。
シメジにしては、マズ過ぎ。 これは、油炒めにしたほうが、良かったか?
あくまでも毒見なので、食すのは自分のみ。 これが午後2時30分ぐらい。

そのあと、約1時間近く昼寝をした。

目が覚めると、胃もたれのような、食べ物が消化しきれてない感じがする。
「昼飯、食い過ぎたからなぁ」などと思いながら、インターネットで毒きのこを調べていたりしたのだが、 マア、大丈夫だろうとタカをくくっていた。

しかし、5時くらいから腹がすこし膨れてきた感じがする。
それから徐々に、膨満感というか、腹の膨れ具合の度合いが大きくなってくる。

5時30分、軽いむかつきを感じて、トイレへ。
入ったとたん、嘔吐。
特別苦しいわけではない。 が、昼飯のカレーの匂いが鼻を突く。

口をゆすいで、少し休むも、再び嘔吐感が襲う。
2回目のトイレ。今度は勢いよく嘔吐。太い水道管のバルブを一気に開けたような感じ。
まだ、カレーの匂いがする。 そのカレーの匂いが、よけいムカムカ感を誘う。

ごく軽い目まいのような感覚が襲う。
吐いた直後なので胃に痛みを感じる。

こりゃ、まずいもん食ったかな、と思ったが後の祭りとはこのこと。
胃腸薬を飲み横になるが、すぐに再びムカムカ感が襲い、トイレに。
さっき薬と一緒に飲んだ水が、勢いよく口から飛び出す。

これは、二日酔いの朝に胃腸薬を飲んだときとよく起こる症状なので、なれたもの。
とはいえ、食欲はゼロ。飲む気、食べる気にならず7時30分、就寝。

気のせいなのか、かすかに、手足にしびれるような感覚が。
それと左耳の奥で、血液の流れる「ドク、ドク」というか「ゴリ、ゴリ」というような違和音がする。 寝つくには、いつもより時間が掛かったものの、そのまま寝入ッてしまった。

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2日目

夜中12時10分に下腹に違和感を覚え、目がさめる。
下痢、それもほとんどが水。
かといって、お腹を壊したときの、キリキリと刺すような下腹の痛さはない。

出すものを出したら、落ち着いてしまった。 この時点で、きのこの毒に中ったことを確信。
再び床につく。我ながら神経がズ太いのか、元から繊細さなど持ち合わせていないのか、 すぐに眠りにつくことができた。

朝6時、また下痢、やはり水、胃の痛みが大きい。
その後、2,3度トイレに行くが、ヤッパ、水。

そのかわりといってはなんだが、小便がほとんど出ない。 出てもチョロッといった感じ。
胃の痛み(鈍痛)、背中の苦しさは、治まる気配がない。 痛みをこらえたまま布団にもぐり込む。

昼近くに起き出し「とりあえず、何か腹に入れといた方がいいか」と思い、雑炊を食べる。
食後、心配していた嘔吐感はなかった。
しかし、胃の痛み、わき腹(肝臓のあたり)の苦しいような感覚はおさまらない。
その後、床につく。体が弱っているせいか良く眠れる。

夕方5時くらいに起き出しトイレに入るも、やはり、水。
が、すこし食欲が出てきたようなので、お粥を軽く一杯と味噌汁をお椀で半分。
胃の痛み、わき腹の痛みは治まらない。 肩、背中にシップを張る。

これは、風邪のときの自分流の治療法。
筋肉がバンバンに張ったときには、少しからだが楽になったような気がする。
小便は、やはりチョロッとしかでない。 毒を出せねばと思い、2000ccのスポーツドリンクのを買ってきて、ひたすら飲みまくる。

9時過ぎに就寝、背中の苦しいような痛いような感覚は続いている。
特に、胃の痛みは、胃袋を両手で揉み困れているような感覚。

布団の中で、 きのこの毒で内臓疾患になるといったことを書いていた本があったような気がして不安になる。
かといって、病院へ行けば、新聞やテレビ、ラジオのニュースになるな。
そんなんも、ヤダしなー。

あれほど、水分補給したつもりなのに、小の方は出る気配もない。
これで、明日も症状の改善がなければ、 恥とか言ってられない病院にいくしかないと覚悟を決めて寝た。


3日目

朝6時過ぎ、トイレでおならが2発出る。

これで大丈夫と安心したのだが、それで下痢が収まったわけではなかった。
昨日に比べれば、はるかに軽くはなっているが、胃のむかつきは、全く二日酔いのそれ。
気持ち悪―っていうアレである。

昼過ぎ、小便がまともな量となり、快方に向かっていることを実感。
これで、病院にいくこともないと一安心。

勿論、鍋に残っていたきのこはすべて、2日目に捨てました。 わき腹(肝臓のあたりの重苦しい痛みは結局、1週間近くひくことは無かった。

教訓

あのきのこはクサウラベニタケだったようです。
柄が細くて、もろいと書いてあるのだが、もろかったのは確かだが、決して細くは無かった。 プックラと太っていて、美味しそうだったんだもの。っ

て言い訳したって始まらないって。

よい子は絶対にマネしないようにね。


って、誰もマネしないってばさ。